町田kkkk

可能性の奴隷

脳を圧迫するあなたのこと

妻が「もう九月だね」と言ったから
ああ、そうかもう九月か、と思った
暦ではもう既に九月だということは勿論知っていた
働いているしね
だけど実感として体感として
九月と思うことがないまま今日まで過ぎていて
そして危うく九月を知らないままに終わってしまうところだった
環境にはもう慣れ果ててしまったけれど
季節が鼻腔をくすぐっていくことにすら気付かないほど
相変わらず最悪な生活で
大切な事も色褪せて忘れてしまうことが多いような気がしたり
そのへんの動物に餌をあげて
きゃっきゃっすることもなくなった
想像力で夜道が怖くなることもない
他人の家から漏れてくるカレーの匂いに
自分が愛おしくなることも
日差しに手をかざすことも
足音にわくわくすることもない
脳裏に存在する後ろ姿が薄っすらで
どんな笑顔だったか
もう一回見せてくれなきゃ思い出せないよ
脳を圧迫するあしたのこと


ああ、言われてみればそうだなって思う
やけに月が綺麗だなとベランダで煙草を吸いながら不思議だった
でも合点がいったよ。そういうことね
九月だもんな