町田kkkk

可能性の奴隷

「O.K Computer」


だだっ広い草原に白い半球の物体が 五つくらい点在していた
海岸沿いを走る車の窓から見えるそれらの光景は
海沿い特有の眩しすぎる夕焼けも相まって
あまりに異様で
異様過ぎるから
僕はそれが一体なんなのか気になって仕方なく
後続車がないことをバックミラーで確認し、道路脇に車を止めた
とりあえずマールボロメンソールライトにターボライターで火をつけて
昨日の事をちょっとだけ思い出しながら、煙を吐き出す
昨日は一体なんだったのだろう、全く意味が分からない
白い半球を睨みつけるように三分間程眺め
深呼吸と背伸びをした後、車から降りる
その草原は訳の分からない白い半球さえなければ
変哲も無いのどかな田舎風景だった
ただ西日が無性に強くって
僕は雑草と名も知らぬ花を蹴り散らしながら
それら白い半球の側まで行き
その正体を一つ一つ確認する事にした
歩く度踏み潰される花々の匂いがとても艶かしく


一番北側にあったのは只の肥大化した白いキノコだった、不細工な形の
北西にあったのは白装束を着た人の群だった
彼らは僕と同じ言語ではない何か呪文のようなものを唱えながら
オクラホマミキサーを踊っていた
僕は少しだけ「あぁ、僕も混ぜて欲しいな」と思ったけれど
何も言わず立ち去った。だって異常だから


北北西にあったのは白いテントでその中には白骨化した死体があった
あぁどれもこれも全部真っ白いなぁと思いながら
また煙草に火をつける
煙草のBOXの中には後二本しか入っていなかった
僕は南の白い半球を調べにいくと
それもまた白いテントだった
煙草を吹かしながら何の気なしに
中を覗くと白い宇宙ウサギが居た
そいつは突然の訪問者にも大して驚きもせず
ゆっくり振り返ると僕を睨み
「なんだよ」とカリフラワーを食べながら言った
僕は少し躊躇した後、「白いですね、ここは。全体的に」と思ったままの感想を述べる
宇宙ウサギは「うるせぇな、関係ないだろう。用が無いならカリフラワー食えよ」と
カリフラワーを投げてくるので
僕は慌てて「いいえ、用はあります。その用と言うのは相談です。」
何故かそう、言っていた
相手はただのウサギなのに
ただの喋るウサギなのに、だけど僕には分からない事が彼には全て分かる気がして
するとウサギみたいなやつは「あ、そうなの?いいよ。聞くよ。とりあえずカリフラワー食えよ」と言うので
僕は足下に落ちたカリフラワーを食べながら昨日理解できなかった事を話はじめた
まずいカリフラワーだなあと思いながら
「あのですね、僕は好きな娘とキスしてセックスしたいなーと思ったら
キスしてセックスしたいんですけど
どうやら僕以外の人間は恋愛とセックスの関係性について色々考えていて
そのせいで僕は好きな時にキスしてセックスできないのです
それが嫌で不可解でとても困っています
どうしたらいいでしょう?」

白い目のウサギは少し眠そうに
「それはね、みんな暇を持て余していて特に思索する事もないからそんな事ばっか言ってるんだよ
そんな事考えてるとなんだかちゃんと迷いながらも頑張って生きてるっ☆ って気がするからね
それに一日中部屋に籠もってセックスしてたら 頭が悪くなちゃうからそういう事を考えてるんだ」
僕は驚いて「え、セックスばっかりしてると頭悪くなるんですか!?」と聞くと
宇宙ウサギは「いや、お前もう染色体一本足りてないから
それ以上悪化しないから大丈夫」と言ってくれたので
僕は「あぁ良かった」とまずいカリフラワーを貪る
「それで、」ウサギは言う
「君の相談の答えなんだけど」
ウサギもカリフラワーを食う
「少女漫画みたいにセックスと恋愛の関係性について考えることは
世の中が頭の悪い人間で溢れかえらないよう
世界のシステムを維持する為に大事な事だから
君はセックスしたい時にセックスできないよ。諦めな。」
ウサギは笑った
僕はああやっぱりそうかぁ
残念だなぁと
昨日の事をまた少しだけ思い出してみる
「大変勉強になりました。どうもありがとうございました。」
と言ってドロドロになったカリフラワーを口から吐き出し、のそのそ立ち上がり
テントを出ようとした
「ところで」
宇宙ウサギが少し小さい声で言った
「え?なんですか?」僕は向き直す

「お前、そんな事言ってるから童貞なんだよ。昨日だってさあ」


僕はウサギを殺した後
最後に南南西にある白い半球に向かった
それもやっぱりテントで
その中には透き通るような白い肌の綺麗な女の人が居た
僕は一目でその女性に恋をしたので
「キスしてセックスしていいですか?」と
聞くと
「駄目よ。ちゃんと順序を踏まなきゃ。それが恋愛よ」
と言うので
ああまたこれかとうんざりしながら
僕は上向きに唾を吐き、それが自分の顔に落下した事を確認した後言い放つ
「僕は君を愛しています。世界で一番君が好きです。一生君だけを愛します。だからこのウサギもあげます」


「オーケー。SEXしましょう」